TOUR

モダン建築トークツアー「ビラ・シリーズ探訪」

2017.08.26
https://accesspoint.jp/reports/%e3%83%a2%e3%83%80%e3%83%b3%e5%bb%ba%e7%af%89%e3%83%88%e3%83%bc%e3%82%af%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%80%8c%e3%83%93%e3%83%a9%e3%83%bb%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%ba%e6%8e%a2%e8%a8%aa%e3%80%8d/

日時:2017年8月26日(土)10:00~13:00

 

見学場所:堀田英二「ビラ・ビアンカ」、坂倉建築研究所「ビラ・セレーナ」(外観から見学)、坂倉建築研究所「ビラ・フレスカ」、大谷幸夫/大谷研究室「ビラ・グロリア」(外観から見学)、坂倉建築研究所「ビラ・サピエンザ」

 

参加者:13名

 

ナビゲーター:倉方俊輔

 

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本日は、半世紀を経てもなお魅力が衰えない「ビラ・シリーズ」を巡るツアーでした。「ビラ・シリーズ」は欧米と比べると異質な日本の住宅事情を踏まえて、都市に集まって住まうための提案をおこなっています。神宮前を中心に、最後は世田谷へ、時系列順に「ビラ・シリーズ」の変遷とそこに共通するスピリットを感じてきました。

 

《ビラ・ビアンカ》は東京オリンピックと同じ1964年に竣工した最初の「ビラ・シリーズ」です。グリッドを基本とした単純な平面の中にも、外部空間のとり方によってそれぞれの住戸に個別性が生まれています。外観は未来的にも見えますが、木組みのような梁の造形であったり、オリジナルではガラス窓の内側にはカーテンの代わりに障子が入っていたりと和風な印象も受けました。内部も手すりやドアのデザインが心地よさを作り出しているように感じました。

 

少し歩くと、坂倉建築研究所の《ビラ・セレーナ》と《ビラ・フレスカ》があります。それぞれ1971年、1972年竣工です。出来た時期が近いので、デザインにも共通性が感じられます。《ビラ・セレーナ》は中庭をつくり、外部に対して閉じたような印象です。しかし、中庭に通ずる“切れ目”のような部分が黄色く塗られており、外から中を窺いたくなる気持ちになりました。こんな色彩の使い方もあるのだと驚いたのと同時に、無理に外に開こうとしなくとも内と外の関係性を作り出すことはできるのだという気づきがありました。

《ビラ・フレスカ》は逆にポケットパークのような空間をつくり、積極的に外部との関係性を生み出そうとしている印象を受けました。どちらの建物も白と黄色の対比が美しかったです。

 

最後にバスを乗り継いで《ビラ・サピエンザ》(1981)へ。外装は普通のタイル張りにして、あえて街の中に埋もれるような姿をしていますが、共有の中庭に入ると印象はガラリと変わります。住宅街の中でもなるべく高さを感じないように、1,2階と3階では仕上げが違ったり、壁を共有することを嫌う日本人の性質を捉えて戸建てが集まったような構成になったりしていました。都心から少し離れていることもあり、これまでの「ビラ・シリーズ」よりも落ち着いた雰囲気を感じました。

 

欧米の住宅事情を視察してきた興和商事の石田鑑三が、自分たち(すなわち、日本人)で新しい住宅をつくらなければならない、というスピリットを持ち実現してきた「ビラ・シリーズ」は時代や場所に合わせた形へと変化はしています。しかし、人々がどのように集まって生活するか、外部との関係はどうするかという提案は「ビラ・シリーズ」が現在でも魅力を失っていない一つの理由だと思いました。

 

レポート:中村 竜太(学生インターン)

早稲田大学 創造理工学部 建築学科3年