TOUR

【OZONE共同企画】大江宏の公共性

2019.12.8
https://accesspoint.jp/reports/%e3%80%90ozone%e5%85%b1%e5%90%8c%e4%bc%81%e7%94%bb%e3%80%91%e5%a4%a7%e6%b1%9f%e5%ae%8f%e3%81%ae%e5%85%ac%e5%85%b1%e6%80%a7/

日時:2019年12月8日(日)13:30-16:00

見学場所:大江宏《東京さぬき倶楽部》(1972年)、鈴木エドワード《ジュールA》(1990年)

参加者:7名

ナビゲーター:倉方俊輔

 

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最初に、リビングスペースOZONEで行われたセミナーの内容を踏まえ、《東京さぬき倶楽部》(1972年、大江宏)を見学しました。東京さぬき倶楽部は工芸的、装飾的な要素も取り入れた「家」のような空間をあくまでもモダニズムの範疇で実現させた、大江宏らしい建築だといえます。

 

外観はコンクリートを用いたシャープな造りですが、各階に設置されたベランダがヒューマンスケールを感じさせ、エントランスのレース様の装飾、ボールト屋根のような様式主義的な要素も取り入れています。

 

内部に入ると、シャンデリアが吊るされ、階段がめぐらされたまるで戦前の洋館のような吹抜があります。吹抜は階段の位置をずらしたり、数段の段差をつけたりすることで、分節しながらつながっており、途中には人々が留まれるようなスペースが多く設けられています。この「空間を操作して造形する」姿勢はモダニズムそのものです。また、このシャンデリアや手摺りの装飾は実は同じパターンの繰り返しになっており、大量生産の技術を積極的に活用することでモダニズムが追求する合理性・経済性を実現しています。

 

更に奥はロビーで、壁面には青い陶器のタイルや煉瓦、プレキャストコンクリートなど様々な素材がそのまま使用されています。このように様々な材料を上手く調和させて取り入れるところにも大江らしさが見られます。ロビーの照明は小さなアルミ板を組み合わせて作られており、蛍光灯の光を反射して揺らいで見えるのが印象的でした。また、ロビーの柱とガラスのカーテンウォールという構成はモダニズム建築の特徴で、建物の内部と外部が自然に連続的につながっています。

 

続いて、同じく麻布十番にあるバブル期のビル《ジュールA》(1990年、鈴木エドワード)を見学しました。ジュールAは、明快でデザイナー性を前面に出した建築で、当時の空気を強く反映しています。穴が開いた金属板であるパンチングメタルでつくられた雲状の板で表面を覆うことで、軽やかで風通しの良い雰囲気を演出しています。外部に開放された2階から4階にかけての吹抜部分、地下鉄の開通を見据えて造られた自由通路など都市再開発との関わりを見ることもできました。

 

いずれの建物も老朽化や独特の空間が難点となり、建設された時代の特徴や作家の意図が十分に生かされているとは言えないのが課題とのことです。ツアーを通して、熱心に解説を聞いたり質問をされたりする参加者の方の様子が印象的でした。

 

 

レポート:山東真由子(学生インターン)

慶應義塾大学医学部3年