TOUR

異色の建築家 梵寿綱ツアー

2019.6.30
https://accesspoint.jp/reports/%e7%95%b0%e8%89%b2%e3%81%ae%e5%bb%ba%e7%af%89%e5%ae%b6%e3%80%80%e6%a2%b5%e5%af%bf%e7%b6%b1%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc/

日時:2019年6月30日(日)9:30 – 13:00

見学場所:《ラポルタ和泉》(1990)、《マインド和亜》(1992)、《ルボワ平喜》(1979)、《ドラード和世陀》(1983)

参加者:15名

スペシャルゲスト:梵寿綱(建築家)

ナビゲーター:和田菜穂子

 

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梵寿綱氏の建築を巡るツアーは、必然的に建物に付随した美術作品に触れることになります。一軒目は、代田橋にある《ラポルタ和泉》。まず私たちの目に飛び込んできたのは、建物最上部にあるペガサス像です。そしてエントランスには、身体をくねらせた女性の巨大なレリーフがあります。入口を入ると天井の高い吹き抜け空間になっていて、鮮やかな色のステンドグラスが仕込まれ、光が舞い降り、まるで教会のようです。

 

続いて近くにある《マインド和亜》を見学しました。海をコンセプトに造られた中庭の空間には、テーブルや椅子が置かれ、上を見上げると女神像があり、高い天窓から光が注がれ、周りには様々な彫刻が施されています。また、郵便受けのコーナーには、10円玉とミニ鯨など、いろいろな遊び心が見受けられます。

 

次に代田橋から池袋へ移動し、《ルボワ平喜》へ向かいました。外部は神殿のように真っ白で、それとは対照的に内部はカラフルな世界です。天井は高く、それは梵さんの建築の特徴なのかと私は感じました。壁から生えている腕のランプ、座ったら抱きしめられそうな椅子、垂れ下がるタコの吸盤のような装飾など、神秘的な気分に駆り立てられます。

 

最後に訪れたのは、早稲田にある「ドラード和世陀」です。外壁にはさまざまなタイルや陶片などの装飾で覆い尽くされています。建物の奥には色どりのステンドグラスに囲まれた空間があり、そこに木製の手の形の椅子が置かれています。また、梵さんの建築には装飾として鉄が多く使われています。ここにも曲線を強調した、アール・ヌーヴォー風の蝶の羽をイメージした鉄の門がありました。

 

ツアーを終えた後、ご本人からいろいろな話をお聞きし、非常に貴重な体験となりました。梵さんはよく「日本のガウディ」と呼ばれていますが、ガウディとは異なり、芸術家たちを尊重し、コラボレーションを図ります。自分の意図を形にしてもらうことがコラボレーションの目的ではなく、意欲のある若いアーティストたちに活躍の場を与えているのです。大きな方針だけを決め、アーティストに任せて、彼らを全面的に信頼します。「全て偶然です。気付いたらこんなものが出来ていた」と梵さんは語りました。建物の完成までのプロセスを聞くと、彼の人生の哲学が読み取れます。今回はまさに梵さんに対する誤解が解けたツアーだと思いました。

 

レポート:顔 欣(学生インターン)

慶應義塾大学文学部3年