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乃木坂散歩:都市の狭間の小住宅

2018.3.17
https://accesspoint.jp/reports/%e4%b9%83%e6%9c%a8%e5%9d%82%e6%95%a3%e6%ad%a9%ef%bc%9a%e9%83%bd%e5%b8%82%e3%81%ae%e7%8b%ad%e9%96%93%e3%81%ae%e5%b0%8f%e4%bd%8f%e5%ae%85/

日時:2018年3月17日(土)14:00~16:00

見学場所:《旧乃木邸》、《乃木神社》、《乃木会館》、《乃木坂ハウス》など

参加者:10名

ナビゲーター:和田菜穂子

 

 

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まず、明治期に建てられた《旧乃木邸》と厩舎を見学。《旧乃木邸》は、明治天皇崩御の後に殉死された陸軍大将乃木希典夫妻の邸宅。現存する家屋は、乃木大自らの設計により明治35 年に新築されたもので、外観は黒塗りの板張りで飾り気なくとても簡素。厩舎は明治22 年の竣工で、煉瓦造り、瓦葺きの平屋建てで母屋より立派に見えました。馬を大切にした乃木大将の人柄が偲ばれます。

 

隣接する公園を降りていくと《乃木神社》です。大江新太郎設計による創建時の本殿(1923)は戦災で焼失。現在の本殿(1962)及び隣接する《乃木会館》(1968)は息子・大江宏が設計を手がけたもの。なお、神社内の宝物殿(1983)は宏の長男・大江新と三男・昭による設計ということで、建築家三代にわたるリレー作品となっています!結婚式場として名高い《乃木神社》では、折しも結婚式が執り行われており、会館とつながる名高い回廊を見学しつつ、神聖な式を目にすることが出来てラッキーでした。

 

その後は、都心には珍しい緑地となっている生長の家《いのちの樹林》を抜けて、建築ウオッチングをしながら、本日のメイン《乃木坂ハウス》へ。南青山方面の住宅街へ入ってすぐの狭い角地に《乃木坂ハウス》(2011)がありました。敷地(34.42㎡)は想像していたよりもさらに狭小、建築面積はなんと22.72㎡!

 

建築家・岩岡竜夫氏(東京理科大学教授)のアトリエ兼自邸です。今回はご本人の案内で内部見学もさせていただきました。とてもフレンドリーな方で、素人の参加者たちにも分かりやすいように丁寧な説明をしてくださいました。建物は地下1階地上3階建、延べ床86.28㎡、狭い敷地を生かすべく、様々な建築関係の法律規制を検討し尽くした上での設計だったとか。

(1階はエントランスとトイレ、2階がキッチンとリビングダイニング、3階が寝室で屋上階にお風呂などの水回り施設、B1階はアトリエ、屋上は太陽光温水器が設置された木製デッキのガーデンになっています。眺めの良いこと。六本木ヒルズを始めとする高層ビルが一望できます。)

 

構造上の大きな特徴は、天井と床の内部に配管を施し、太陽熱や雨水、井戸水などの自然エネルギーを活用し輻射式冷暖房システムを組み入れていることです。むきだしの設備と構造に皆さんからたくさん質問がありました。鉄骨の構造体を本棚として使うなど、無駄のない合理的なデザイン。本は断熱にも有効とのこと。都市ならでは小住宅ですが、岩岡さんご自身のライフスタイルも室内土足履きなど、とても都会的で感銘を受けました。

 

 

レポート:大山 光彦(社会人ボランティア・スタッフ)