TOUR

【学生向け企画】上野の建築 ランニング&ラーニングツアー

2018.5.13
https://accesspoint.jp/reports/%e3%80%90%e5%ad%a6%e7%94%9f%e5%90%91%e3%81%91%e4%bc%81%e7%94%bb%e3%80%91%e4%b8%8a%e9%87%8e%e3%81%ae%e5%bb%ba%e7%af%89-%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%8b%e3%83%b3%e3%82%b0%ef%bc%86%e3%83%a9%e3%83%bc%e3%83%8b/

日時:2018年5月13日(日)10:00~12:00

見学場所:ル・コルビュジェ≪国立西洋美術館≫(1959)、前川國男≪東京文化会館≫(1961)、吉田五十八≪日本芸術院会館≫(1958)、松田平田設計≪UENO3153≫(2012)、黒川哲郎≪上野動物園前派出所≫(1992)、前川國男≪東京都美術館≫(1975)、≪奏楽堂≫(1890)、中川俊二≪博物館動物園駅≫(1933)、六角鬼丈≪東京藝術大学大学美術館≫(1999)、≪国際子ども図書館≫(1906)、≪東京国立博物館≫(片山東熊≪表慶館≫(1908)、渡辺仁≪本館≫(1937)、谷口吉郎≪東洋館≫(1968)、谷口吉生≪法隆寺宝物館≫(1999)

参加者:15名

ナビゲーター:磯達雄

 

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東京建築アクセスポイントで初の試み、学生限定のツアーが開催されました。

場所として選ばれたのは、著名な建築家達が関わった建物が並ぶ上野恩賜公園です。

 

まずはル・コルビュジェが設計した≪国立西洋美術館≫(1959)へ。2016年に文化遺産に登録され日本に唯一存在する建築作品として重要度も高い建物です。その構成は常設展示室が渦巻き状になっていて永遠に増築できる「無限成長美術館」の構想を元に作られてあり、19世紀ホールの三角形に切り取られた天窓や2階展示室への光の入れ方などが重要な特徴として挙げられるそうです。

 

≪国立西洋美術館≫の向かい側にはル・コルビュジェの弟子である前川國男が設計した≪東京文化会館≫(1961)が建っています。師の影響を大きく受けたこの建物は手前に反り返っている深い庇が象徴的で、また≪国立西洋美術館≫との間に広場を作っているその関係性も注目すべき点との事でした。

 

続いて向かったのは1958年に吉田五十八が設計して建てられた≪日本芸術院会館≫。後年世田谷区に建てられた五島美術館でも見受けられる、寝殿造りを基調とした水平ラインの造形が特徴的です。

 

上野恩賜公園には明治維新で活躍した西郷隆盛像がありますが、その像から横に視線をずらすと松田平田設計によ≪UENO3153≫(2012)が建っています。≪上野百貨店≫(1952)の老朽化に伴い建て替えられたビルですが、上野恩賜公園の高低差を上手く利用して作られていて、公園内外で違う表情を見せているのが魅力的だなと感じました。

 

東京藝術大学と上野恩賜公園との繋がりも欠かす事が出来ないポイントです。≪上野動物園前派出所≫(1992)は東京藝術大学の教授であった故黒川哲郎による設計。同じく教授であった岡田信一郎は小松宮彰仁親王銅像の台座を手掛けた他、≪黒田記念館≫の設計も手掛ける等、上野恩賜公園と深い関わりを持っていました。≪東京都美術館≫は≪東京文化会館≫を手掛けた前川國男により1975年に建てられていますが、その前身である旧館は岡田信一郎による1926年の作品でした。前川による≪東京都美術館≫は氏が建築家として実績を積んでいく中で安全で綺麗で美しい外壁を目指して考案された「打込みタイル」が外観の特徴として挙げられます。

 

日本で一番古いコンサートホールである≪奏楽堂≫(1890)を見学した後は中川俊二による≪博物館動物園駅≫(1933)を見学。そして六角鬼丈により設計された≪東京藝術大学大学美術館≫(1999)の工芸と美術が融合しているその様を見学し、≪国際子ども図書館≫へ。

 

こちらは1906年の開館から増築などの変遷を経て2000年に安藤忠雄による大規模リノベーションが施されていますが、ルネサンス様式の建物を2つのガラスボックスが貫いていてその様式美を間近で見る事が出来る楽しさがありました。また、階段室に繋がる扉には「おすとあく」と書かれたプレートなど、長い時代を経た建物ならではの見所ポイントも。

 

ツアーの最後は≪東京国立博物館≫へ向かいました。広大な敷地の中一際優雅な造形で目を引く≪表慶館≫(1908)は宮内省の技師であった片山東熊設計による建物でドーム屋根が特徴です。≪本館≫は渡辺仁により1937年に建てられました。当時コンペによって一等に選ばれましたが、世間の評価は前川國男が提示した案の方が高かったそうです。現在は渡辺による建物も高く評価されていて、時代により評価が変遷する例として挙げられるとの事でした。≪東洋館≫(1968)は谷口吉郎による建物で、縦方向に強調されたデザインと床レベルが微妙に異なる動きのある空間が特徴。≪法隆寺宝物館≫(1999)は谷口吉郎の息子である谷口吉生が設計したモダニズム建築で、その造形は海外でも高く評価され、≪ニューヨーク近代美術館新館≫の設計者にも選ばれることになるそうです。

 

2時間、駆け足で上野恩賜公園内を見て回りましたが、どの学生も真剣に磯先生の話を聞きメモをしている姿が印象的でした。今回のツアーをきっかけにそれぞれが自分なりの建築の楽しみ方を見つけてくれるといいなと思いました。

 

 

レポート:阿久根 直子(学生インターン)

桑沢デザイン研究所デザイン専攻科2年