TOUR & LECTURE

メタボリズムを学ぶ基本編 vol. 5 & 6

2017.09.24
http://accesspoint.jp/reports/%e3%83%a1%e3%82%bf%e3%83%9c%e3%83%aa%e3%82%ba%e3%83%a0%e3%82%92%e5%ad%a6%e3%81%b6%e5%9f%ba%e6%9c%ac%e7%b7%a8-vol-5-6/

開催日:2017年9月24日(日)

見学場所:《ニュー新橋ビル》、《静岡新聞・静岡放送東京支社》、《中銀カプセルタワー》

参加者:2名(午前)、2名(午後)

ナビゲーター:和田菜穂子

 

今回のツアーアシスタントは、AP社会人ボランティア第一号の大山さんです。大山さんは東京都美術館で「とびらー」として活動していた建築ボランティアの経験豊富な方です。

 

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新橋駅SL広場前で集合し、まずは「ニュー新橋ビル」の内部見学からスタート。「なぜに新橋駅前の雑居ビルから?」と不審にも思えるのですが、実はこの建物由緒あるモダンビル。設計は松田平田設計事務所。建築で著名なアメリカ・コーネル大学出身の先輩・後輩コンビの作品です。また、竣工年は1971年で、本日のメイン「中銀カプセルタワー」(1972年)とほぼ同年代。築50年近いビルの使われ方、メンテナンス状況の比較も出来るというところがポイントです。普段はサラリーマンでごった返している一階ロビーで、レイアウト、テナント入居者情報などの説明を受けました。商店やオフィスの雑居ビルと思っていたら、なんと最上階は住居になっていることにびっくり。さらに建築ウオッチングの目で観察を始めると思わぬ発見があります。まずは、階段部分の壁面タイルは階段ごとに色分けされた複雑な凹凸模様。丁寧な仕事ぶりに、当時の設計者と職人さんとの丁々発止のやり取りが目に浮かぶようです。11階の住居フロアをさっと見せてもらってから3階、4階の商店フロアを一周。気がつきませんでしたが、商店テナントが入る商業棟は低層4階建て。11階建のオフィス棟は、広い商業棟の半分ほどの面積にセットバックされてのっかっている形です。その空いているスペースがなんと屋上スペース。平日昼間は解放されるそうですが、新橋駅のホームとビルの谷間に囲まれた不思議な空間。サラリーマンの秘密の憩いの場となっているのです。また、感心したのは、商業棟の中央部分に設置された、ゴミ出し&清掃用の清潔なユーティリティ・エリア。エレベーターは人荷用とゴミ搬出用と使用目的別に分けられ、分別用のゴミ箱もきちんと整理されており、水回りもきれいです。築年が古くてもメンテナンスが行き届いていることが、多くのテナントを引き付けている秘訣なのかもしれません。

 

 

ディテールにもこだわっている「ニュー新橋ビル」の外観を見てから、次の目的地「静岡新聞・静岡放送東京支社」へ。こちらは丹下健三のメタボリズム建築。銀座のはずれの狭小な変形敷地をうまく使って建てられています。

コアとなる支柱に四角いユニットの部屋がはめ込まれており、確かに空いているスペースに増殖可能と思わせる形態です。しかしながら、コアのカーブで部屋の内部が浸食され、使いづらい空間なのではなどと想像しました。

 

 

そして、いよいよ目的の「中銀カプセルタワー」へ。陸橋越しにベストポジションに案内してもらい全景を撮影。先ほど見てきた「静岡新聞・静岡放送東京支社」と似た形態ですが、こちらはコアとなるタワーがA棟、B棟と二つ。そこにおびただしい数のユニットがはめ込まれています。その数はさていくつ? 知りたい方はぜひツアーに参加して確認してください。さて、内部に入らせていただくと、まずは共用部の荒廃ぶりに心が痛みます。雨漏りで鉄さびが浮いた渡り廊下や、カプセル自体の塗装の剥がれなど、、、ナビゲーターの和田さん曰く、「末期癌の患者さんがチューブをいっぱいくっつけて生きながらえている状態」いうことですが、まさにその表現がぴったりな状況です。カプセルによっては、荷物置き場と化して人の住む状態でないような所も目につき、メンテナンスの行き届いた「ニュー新橋ビル」との落差に愕然とします。

 

 

次にカプセル内部へ案内いただいて、居住空間を確認してみます。第一印象は狭い!の一言。窮屈とまではいかないけれど、長居したくない狭さです。元々、都心で働くサラリーマンが仕事で遅くなった時に、簡便に泊まれるようにと設計されたミニマムなワンルームですから、、、しかしながら、しばらく和田さんの解説を聞きながら、床に座っているうちに次第にその狭さになじんでいくのが不思議でした。参加者一同、意外に落ち着くねという感想。それもそのはず、このスペースは本格茶室の設計も手がけていた黒川紀章のデザイン。茶室にしてはモダンでクールな内装ですが、人間が座って落ち着ける空間というのは、座っていてすべての物に手が届くくらいがいいのかもしれません。今回は参加者(午前)が2名だったので、サポーターの私を入れて合計4名。そのせいもあり、落ち着ける空間だった気がします。当時のソニー製オーディオセットや、レトロな電卓などに触れ、黒川さんの映像を拝見したりと、まったりした時間を過ごして解散となりました。保存か再生か?手遅れになってしまう前に、カプセル交換や強制的なメンテナンスなど、何か打つ手はなかったのかと考えさせられるツアーでした。

 

 

 

レポート:大山光彦(社会人ボランティア)

建築好きの「シニア・サラリーマン」