TOUR

【AALTO】参加者による感想レポート-2

2019.9.08〜15
http://accesspoint.jp/reports/%e3%80%90aalto%e3%80%91%e5%8f%82%e5%8a%a0%e8%80%85%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e6%84%9f%e6%83%b3%e3%83%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%88-2/
和田菜穂子と巡るフィンランド・ロシア〜アアルト建築を訪ねる8日間
日程:2019年9月8日(日)〜15日(日)
主催:ユーラシア旅行社
参加者:14名+添乗員
ナビゲーター:和田菜穂子

2019年9月、ユーラシア旅行にて夫とアアルト建築の旅に参加させて頂いた。今回、アアルトの代表作品を沢山見学させて頂いたが、「この一点」と問われると旅の2日目パイミオに建てられたサナトリウム(病院)とこたえる。

 

この建築に魅せられたのは建物のデザインそのものがそこに住まう人、つまり患者の心情に寄り添っていることに感動したからである。深い針葉樹に囲まれた敷地は空気が澄み青空が広がり、最初この病院を訪れた人々はこの抱かれるような環境に安堵の思いを馳せただろう。結核という当時は排他的なイメージを持った病に死と隣り合わせの追い詰められた患者もいたに違いない、しかしこの建築は患者の気持ちを救い上げるようなデザインが細部に至って施されている。

 

エントランスの庇はアアルトの特徴を放っている。威圧的ではなくやわらかい雰囲気。受付のアール部分は当時1930年代の面影を残しつつ改修されているらしいが掃除機がぶつからないように、階段は幅が広く蹴上が緩い、手摺のディテールに至ってはパートナーのアイノの意向も反映されているかと想像する。病室の取っ手は入出時に着衣が引っかからないように、ドアの開け閉めも音が立たないような配慮、照明はカバー付きで掃除がしやすいように配慮されている。掃除がしやすいということは即ち患者にとって衛生的な環境ということになる。

 

サナトリウムで最も印象に残ったのは外部の大きなテラスで日光浴をする患者たちの往時の姿の白黒写真である。日照時間の短いフインランドでは患者たちにとって太陽光は結核に対して有効な治療であったらしく、長時間座るための機能美から生まれた椅子のデザインはアアルト作品のシンボルともいえるのではないだろうか。結核患者が腰掛けたときに呼吸が楽になるよう設計されている。今でこそ天童木工など成形合板は代表的な製法であるが1930年代に既に家具の曲がり木をデザインに生かしたアアルトの才能と患者主体の精神に脱帽である。

 

食堂の高窓は一階と跳ね出しのロフト部分の上下に明るい光を取り入れている。全館、白を基調色にインテリアのアクセントカラーが柔らかく自然に溶け込むように馴染んでいる。この中間色の色彩計画は病気の精神状態に非常に影響を及ぼすと考える。以前は椅子も黒だったらしいが今回病室のテーブルなど、この色調が私の中のアアルトカラーとして印象に残った。

 

全体計画はすべての病室が陽光を受けるように、病棟は東西軸に一列に計画されている。驚くべきことは1933年に完成したこの建築は今なお色褪せることなくモダンであるということ。アアルトから生まれた家具やデザインが普遍性を持って今も愛用されていることの根源をこのサナトリウムで知らされた気がする。

 

今回、和田先生のご案内でアアルト建築の旅を過ごせたことは本当に有意義な時間でした。参加者の皆さんもアアルトワールドを満喫されたことと思います。これを機会に私個人として、より建築に興味が湧きました。和田先生のパワフルな研究心といつも絶やさない笑顔が印象的でした。その魅力に巻き込まれて生きる活力のようなものを感じています。また機会があれば建築行脚、ご一緒したいです。本当に有難うございました。

レポート:Mさん(女性)